コンピュータは情報を処理する道具です。しかし文書や画像などの情報を生産することについてはともかく、整理することについては「知的生産」などに興味のある人以外にはあまりノウハウが広まっていないように思います。そこで、PC ならではの情報の整理について簡単にご紹介。例によって独断と偏見によりまくりです。
Wiki の記述を追加しました。(2004-04)
やはりこれが基本です。詳しい方法については「ファイルとフォルダ」の中の「やったこと分けと時系列分け」で触れていますが、やはりコンピュータ上の情報の操作、整理の基本はファイルとフォルダの使いこなしにあります。
ポイントはファイルもフォルダも、短すぎない分かりやすい名前をつけること、あちこちに適当にデータを分散させてしまわないこと、です。あとは軽いファイラーかな。
残念ながら OS 標準のファイラーは Windows の Explorer、MacOS の Finder ともにそれほどいいデキではありません。特に System 7.x 時代の Finder や、ファイルの種類や数が増えてきたときの Explorer の遅さには閉口します。というわけで代わりになりそうなファイラーのご紹介。
このソフトを使うだけじゃファイルの整理はできないのですが、ディスクのフォルダ構造をそのままテキストファイル(など)に書き出してくれるソフトがあります。これを使えば、ハードディスクの構造をテキストエディタで見ることができ、注釈の記入なども自由にできます。
ディスクの構造が変わったらまたやり直しですが、例えば自分の作ったデータを他の人に引き継ぐ場合などには便利です。また、いくらファイラーを使ってもディスクの全体を眺めるのはなかなか大変ですので、こうしたソフトを使って一度ディスクの構造を俯瞰すると良いでしょう。
ファイルリストにコメントがつけられて、それが検索できるファイラーって、けっこう便利だと思うんですけど、そういうことができるファイラーって、ないですかね。Mac の場合は Finder でコメント付けはできますね。どのバージョンから可能なのか分かりませんが。
あと、tree コマンドって Unix 用にもあるんですね。
文書データについては、他の人と情報交換をするときのように、検索においてもテキストファイルに一日の長があります。
テキストファイルには UNIX で培われた数々の操縦法があります。その中でも検索はかなりポピュラーです。以前は grep などのツールをユーザーが用意する必要がありましたが、最近は Windows も Mac も OS 標準の検索ツールでその中を検索することが可能です。(Windows は 95 の最初からできましたっけ? MacOS は Sherlock 以降可能です。)これは活用しない手はないでしょう。
これを利用することを念頭に置き、文書データをすべてテキストファイルで保存する、というのが最も検索性の高いデータのストック方法です。いや、もちろんオリジナルは Word だろうがクラリスだろうが、なんで作ってもいいんですよ。その中身をコピー&ペーストでテキストファイルにもしておけばいいだけの話です。ちょっと一手間二手間増やせば、それだけでかなり違います。もちろん同じフォルダに作ってくださいよ。別なフォルダに作ってたんじゃ意味がありません。え、ディスクがもったいない? なーに言ってんだか、この豊ディスクの時代に。
これは実際には使っていないので詳しくはないのですが、基本的には1つのファイルの中に、新聞のスクラップのように新聞記事のコピーやメモをストックしていくタイプのソフトです。メモソフトという形で発表されているかもしれません。画像ファイルなど、すべての形式の情報に、リンクを張る(OLEなど)という方法で対処しているものもあります。
この辺かな。
詳しくは「画像ファイルを整理せよ」で扱っているのですが、こと画像ファイルについては、いちいち開かなくてもサムネイルで中身を確認して整理することができます。(正確には裏で開いてますが。)
また専用のアルバムソフトでは画像にコメントをつけ、それを記録できるようになっているので、それを使うと画像の検索も楽にできるようになります。(本当は JPEG も PNG も画像ファイルの中にコメントを保存できるんだから、それをうまく活用するソフトが出てきてほしいんですが。)
便利そうだなぁとは思うんですが、割と頻繁に更新するファイルとそうでないファイルをちゃんと分けてあればそんなに必要性感じないというか、ファイル開いてみれば分かるし、開かなくても分かるようにドキュメント書いたりしてるので、あらためてデータベースソフトに登録するのが面倒だったりします。
でも、チームで仕事したりしてる場合はあると助かるかもしれません。
もはや何も説明する必要を感じない超有名全文検索エンジン。Perl で各種のフィルタを用意するので Perl が動く必要があります。
OS 標準の検索と何が違うのかというと、フィルタでいろんなフォーマットに対応できることと、Web 用のインターフェイスが用意されているので、LAN 内での共用などに便利、ということですね。もちろん公開用の Web の検索にも利用できます。
具体的なソフトではありませんが、そのリスト。けっこうあるもんですねぇ。
その名も Personal Information Manager. 情報の整理にはうってつけ、のような気がします。
PIM はかなり便利なシロモノではあるのですが、けっこう機能が多いし、フリーソフトの PIM は作者の哲学が如実に反映されるという特徴があるので、その使いこなしにある程度時間が掛かるんです。
だもんで、まだコレという PIM を決められない状態ではなかなか強く PIM で情報管理!と言えません。
個人的にはオススメしません。私も以前使っていたのですが、
と思うので。
本当に簡単なメモをいくつか貼るだけなら使いものになるのですが、長く使っているうちに破綻するような気がします。まぁ、少なくとも整理目的に使うソフトじゃーないでしょう。
先の節ではわざと外していたんですが、実はこうした整理ソフトではなく、アウトラインプロセッサやアイディアプロセッサと呼ばれるソフトが整理目的にも使えます。
純粋なアウトラインプロセッサに撤したソフトではできない芸当ですが、こうしたソフトの一部には、ファイルにリンクを張ることのできるものがあります。この機能を使うと、アウトラインプロセッサ上に普段使いそうな情報のすべてを集約することも可能になります。
もちろん情報整理、検索専門のソフトの方が小さくて速いソフトであることが多いのですが、ソフトの数があれこれ増えると混乱しますから、全部アウトラインプロセッサで統一してしまうというのも一つの考え方です。実際、そういう考え方でアウトラインプロセッサとアイディアプロセッサと PIM の機能がドッキングしたようなものも存在します。
(私見ですが、パソコンはただの情報収集、整理用のツールではなく、情報を発信する、あるいは創造するためのツールではないでしょうか。情報端末や携帯が発達し、わざわざパソコンを使う機会は今後数年のうちに減っていくかもしれません。だからこそ、私は発信や創造の方に重点を置きたいと考えています。)
このような感じで。これを使えばファイルへのリンクとそれに関するメモなどの情報をまとめて管理できます。こうした情報をアウトラインプロセッサやアイディアプロセッサの一つのファイルの中に収めることができれば、OS標準の検索機能を使ってディスク全体を探すよりも速く、効率的に情報を管理することができます。
アイディアプロセッサの中にはこうした情報管理機能を前面に出しているものもありますので、探してみて損はないでしょう。アウトラインプロセッサについては「アウトラインプロセッサで書け!」にもいくつか紹介してありますので、参考にしてみてください。
画像データベースや、上のようなアイディアプロセッサの利用と基本的には同じ方向で、本格的なデータベースソフトを利用するという方法もあります。
しかし、データベースってのは実はその設計が意外に難しいのです。どのようなデータを含む、どのような構造のデータベースにするのかを最初に設計しなければいけないのですが、慣れないとこれが実に難しい。というより、いきなり使い始められないのが実に面倒くさく感じます。
逆に表計算ソフトの方がデータの管理がしやすいということもよくあります。表計算ソフトはデータベースソフトよりも一覧性が高かったりしますしね。仕事が一段落するところで Dir2Csv なんか使うといいかもしれません。
というわけで、利用方法が構造的で明確でない限り、データベースソフトの利用はそれほど得策とは言えないでしょう。データの管理だからこそデータベースソフト、という感じもしますが、汎用のデータベースより、アイディアプロセッサなどの手軽な情報管理ツールの方が使い勝手がいいことって、多いのです。データベースソフトは基本的には定型の、ものすごく大量のデータを扱うことを得意としています。
ここ1, 2年(2002年冬以降)お気に入りの方法は、なんでもかんでも Wiki に放り込んでしまうことです。Wiki については『結城浩のWiki入門』が恐らく最高の参考書なので詳しくはそちらに譲りますが、実はここ 1, 2 年で Wiki を採用しているサイトがものすごいスピードで増えているので、みなさんもそれとは気づかずに利用している場合があると思います。(説教講座でも利用しています。)
この Wiki を使うメリットは
などです。簡単に言うと私はもうファイルベースの情報の整理はいやになってしまったのです(^^; 作った画像も、その画像の説明の書いてあるページに添付することにしています。そうすればそこに書いてある文字を頼りに検索可能ですから。もちろん写真の整理なんかにはこの方法は使えませんが、説明用の図なんてそんなに毎日量産されるものではないので、これで十分だったりします。
個人で firewall の内側で使う分にはサーバ関係のスキルもそれほどムキになる必要はないし、ファイラーの導入や PIM の導入よりもちろん敷居は高いですが、検討する価値はあると思います。ただ、汎用の DB サーバを利用するタイプの Wiki は、設置にもバックアップにもそこそこ高いスキルが必要なので、個人利用にはオススメしません。
なぜメモソフトや PIM ではなく Wiki なのかと言うと、基本的には特定のプラットフォームでしか動かないソフトに依存するのがいやなのと、自分が積極的に情報を生産する作業とシームレスに繋がってほしい、というところがポイントです。そういう意味ではクロスプラットフォームな Kacis はなかなか近いものがあります。しかしもう一つ、テキストデータが大好き、ということがテキストファイルベースの Wiki を採用するに至る大きな理由ですし、メモ・整理用に特別なソフトを用意しなくても毎日ずっと使ってるブラウザで解決できるならその方が嬉しい、という理由もあります。(サーバを起こすのは一度設定しまえばあとは起動など意識する必要がないので、無視する。)
ブラウザを使った編集はやりにくい、という反対意見が出そうですが、そこは個人的には w3m + Emacs なので何も問題なかったりします :-) Mozilla も、試したことはないですが外部エディタで編集する機能があるようですし、IE 系もそのうちコンポーネントブラウザがそんな機能を積むんじゃないかと思っています。それができればみんな Wiki でいいじゃん。