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パソコンをマスターするってどゆこと?

よく「パソコンを習いたい」とか「パソコンをマスターしたい」という言葉を耳にしますが、少し考えるとこれはすごく変な言葉です。パソコンというのはそれを使って何かをするための道具であって、マスターするのはその「何か」な訳です。「カメラ習いたい」と言って、本当にカメラの使い方や構造に関する知識だけ習って写真を撮らない人はいないでしょ?

パソコンマスターへの道

一口にパソコンをマスターするといっても様々な要素とレベルがありますが、たぶんこんなことができれば一応パソコンできる、と言えるんじゃないかと思います。

ただですね。こう書くと非常にシンプルですが、実際にはかなり果てしないことです。

まずは「師匠」を用意する

そこでたいていの人は師匠を用意します。ま、早い話がその辺にいるパソコンに詳しいお兄さん、あるいはおじさん、というのが一般的だと思いますが。(ここでお姉さんが出てこないのは別に女性蔑視ではありません。念のため。)そのときに、何をマスターしたいのか、何がわからないのかをはっきりさせとかないと、良心的な師匠の場合は師匠が困ります。良心的でない師匠の場合はあなたが困ります。

良心的な師匠はあなたに必要そうな情報を分かりやすく網羅し、丁寧に教えてくれると思いますが、それはそんなにその場で理解はできません。よっぽど力量のある師匠とあなたのやる気がないと。逆に、良心的でない師匠の場合は、自分の使っているものをそのまま押しつけてくるか、実験的に自分の使ったことのないものを押しつけてきます。どっちにしろあなたにとっての必要性とか、そんなものはあまり考慮されません。

ちゃんとその師匠以外の勉強の方法も用意しましょう。例えば初心者向けに分かりやすい記事を揃えてくれる雑誌などです。そうしておけばいざ師匠や他の人の説明を受けるときにも理解しやすいですし、何よりトラブルが起きたからって他人の都合を考えずに急に頼ってくる迷惑な初心者にならずに済みます。迷惑でなければ、結構先達は寛大に受けとめてくれるもんです。自分の通った道を後輩が再び通っているのはそんなに悪い気分じゃないですから。でも自分で試してみることもせず、むやみに説明を求めてくるタイプは、確実にいやがられます。

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自分の目的に合ったソフトの使い方が分かる

まずはこれがいちばん基本的なことです。

いわゆるワープロ、表計算、メール、インターネット、くらいがフツー、パソコンを使うといったら必要になってくるソフトですが、あなたの求めるものはこれでしょうか、それとも別なものでしょうか?

ソフトを特定する

あなたはパソコンを何に使いたいのでしょうか? 3D CG を描きたい人がワープロの練習から入ったって意味がありませんからね。ま、タイピングの練習くらいは確かに無駄にはなりませんけど、『○○る Word』なんか買ってきたってしょうがないですよ〜。(まぁしかし、言葉を操る機会がまったくないってのはちょっと想像しにくいですけどね。)

参考までに、タイピングの練習なら「打モモ」をどうぞ。大人から子どもまでハマれます。なぜかタイピングのソフトというとガンマンとか、北斗の拳とか明日のジョーとか、少し暴力のにおいのするものが多かったのですが、これにはそういう要素は全然ありませんからね。重い(PenII-300 くらいのスピードはほしいところ)のが難点ですが、非常によくできていると思います。

さて、ごちゃごちゃ書きましたが、まずは文章を書くことにしましょうか。

ところがワープロひとつとっても MS Word, EG Word, Lotus WordPro, Word Perfect, OASYS, 一太郎, 、、、いくつあるのか私も正確には分かりません。だからワープロを覚えたいので教えてくれ、と言われても困るんですね。ま、フツー今どきビジネスで使われるのは天下の MS Word のようですし、パソコン教室に行っても、まー何も考えていなければ Word, Excel コースか、電子メールコースか、ホームページコースか、みたいな話になるくらい、Word 率は高いでしょう。でもそれですべて通用するほど世の中甘くはありません。あなたがどこでそのワープロを使うのかによって変わってくるのです。

例えば卒論で使うから、という場合にはワープロの選択は比較的自由です。未だにワープロ専用機を新規に買う人もいるはずです。ときどき手書きでないとダメ、とか、TeX でないと受けつけないとか、わけの分からない制限が加えられている場合もありますが、まー大抵は何を使っても、ちゃんと読みやすく印刷できればなんでもいいでしょう。ところが会社で使う、となるとその会社内でルールが決まっているのが普通です。決まっていない会社はよほど分かっている会社かまったくダメダメな会社なので、注意してください。決まっている場合はそれに合わせて覚える必要があります。その場合はあなたに選択権はありません。

新聞記者の場合は、縦書きで原稿用紙に書き込んでいくタイプのワープロを使っていることがよくあります。逆に最近の IT 関連のライターなんかだと、ワープロではなくテキストエディタと写真を別々に入稿、という場合も多いと聞きます。ペーパーレスを進めている会社では、そもそも A4 に印刷という概念がないかもしれません。全部データベース化されてたりして。

このように、単に書くというだけでも、そのとき何を使うのかというのは、実は非常にデリケートな問題なのです。「とりあえず Word でもやらせとけ」的なテキストを作って「情報教育を行っている」なんて言ってる学校や大学は多いと思いますが、ああいうのを見ると恥ずかしくてたまりません。

機能を特定する

また、ソフトが特定できても、まさかそのソフトを完全に理解することはできませんし、そんなことしても無意味です。どうせ機能は増えたり変わったりするんですから。だから必要最低限のこと、自分にとって必要なことをマスターしていきます。

そうなると、一般的にワープロでは何ができるのか、あるいはそのワープロでは大まかに言って何ができるのか、ということが理解できた方が、効果的です。しかし、市販の売れているテキストというのは、イチイチ操作方法がカラーで説明されているだけで、それをどのように使うのが効果的なのか、あるいは何をするときに必要なのか、ということは分かりにくくなっています。結果、すべてに目を通す必要が出てきてしまいます。オススメは逆引きとか、目的別とか、そういう観点で作られている本ですね。

これはしかし、ワープロの標準状態の設計の良し悪しでもあるんですよね。画面になんでもかんでも出てくるから混乱するんです。それをごまかすためにメニューの一部を隠すのは逆にやっちゃいけないことだったと思います。つくづく、MS は使いやすいソフトを作るのが下手です。マネをした Excel と買収した PowerPoint はそこそこいいデキですけどね。Apple の技術者を招いて、インターフェイスの大勉強会をすればいいのに。

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自分のマシンくらいは自分で復旧できる

これはね。言っちゃあなんだけど、最低限度だと思うんですよ。もちろん販売店につき返すってのも手ですよ。そこはお金もらってますから。そうじゃない場合は誰かに頼るわけでしょ? それはねぇ、やっぱ恐縮してもらわないとね。はっきり言って、復旧にはかなり時間と手間が取られます。それほど高度な知識が必要ってわけじゃないですけど、要するに疲れるんですわ。この作業は。それを思うと、私は初心者にはとにかく Mac を薦めたくなるんですね。なにしろ Mac の方が圧倒的に復旧は楽ですから。

復旧のための基本はまず、自分のデータがどこに保存されているか。これを確実に知っていること。ということは普段からデータの保存先をきちんと意識できている必要があります。全部 My Documents の下にある? ほんとにそう言える? メールのデータは? アドレス帳は? ブックマークは? ないでしょ? こういう、普段から何気なく利用しているものこそ、復旧できなかったときに泣きを見ますよ。逆に大掛かりな文章とかデータとかは、意外になんとか復旧できたりするもんです。(私は2000年問題で修士論文をぶっ飛ばした人を知ってます。その人は論文の文章よりもデータの方が重要だということを知ってました。なんとか復旧できてました。)

データがどこにあるか分かったら、次はやっぱりバックアップですね。これは健康と同じでぶっ飛ばしたときにその大切さを知るものですが、人間の健康と違って、治癒という現象はあり得ません、あるかないか、0 か 1 かのシビアな世界ですから、バックアップは絶対に取っておきましょう。かくいう私はあんまり頻繁に取ってないんですけど(^^;、PC の勘所の分かっていない人ほど、大事なところでデータをぶっ飛ばしたり、ハードウェアを破壊したりするものなので、自信のない人は絶対にバックアップを怠らないでください。

具体的なバックアップの方法ですが、いちばんのオススメはハードディスクの増設(^^; 最も単純で人間に対する負荷が低い方法です。次に PC をもう一台用意してネットワークを組む(^^;;;で、そいつにネットワーク経由でデータを飛ばす。はっきり言って MO とかスーパーディスクとか、CD-R、ましてフロッピーなんかより断然楽ですし、楽な方がバックアップを取り続けられます。これはダイエットなんかと同じことです。楽な方が続けられる。これ、真理ナリ。

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どういう利用ができて、それには何が必要か分かる

漠然としていますが、例えばさっきのように「フツー、必要なもの」ってのを列挙できることはこれに当たります。

どういうことかというと、この業界は非常に変化の早い業界ですので、コンピュータの活用方法、活用範囲というのもどんどん変わっていきます。例えば今(2000年)はワープロ、表計算、電子メール、インターネットは基本ですが、数年前まではワープロと表計算だけでしたし、その前は BASIC なんつーものでプログラムが書けること、というのが基本の一つに入っていました。また、今は Windows を使えることが基本ですが、その前は DOS のコマンドを使えることが基本でした。

つまり先に書いたように自分にとって現時点で必要なものだけが分かっていても、本当はそれだけじゃだめ、ということです。今やっている方法はいずれダメになるかもしれません。だから自分の必要に沿ってスキルを上げていくと同時に、それ以外の方法、それ以外の可能性を知っておかないと、ある日突然何も分からない状態に逆戻りする可能性があります。Lotus1-2-3 のマクロをバリバリに使いこなしていた人が、Windows 時代になってあまり活躍しなくなる、というのもあながち嘘ではありません。

もちろんどこまでいってもほとんど変わらない基本というのもあります。例えばワープロがいくら変化してもその本当に必要な、最も原始的な機能は、文字、単語、文章を書く、という点につきます。(レイアウトに関しては、それ専門のソフトの方が使いやすく高性能で厳密でしょう)そしてそれは特定のワープロでなくても可能ですし、文書データのもっとも基本的なデータの保存にはワープロ文書ではなく、テキストファイルというものを利用した方が、再利用しやすいということが言えます。

また、どんどんネットワーク化していく現在においては、ウィルスに対するある程度の知識やメールにおける基本的なマナーを抑えておかないと、自分が何かの被害にあったり、他の人に大きな迷惑を掛けることもあります。こうしたことも、自分の目的とは関係なくても、理解しておくべきだと思います。

そうでなくても、例えばプリンタを買うときには文書を大量に印刷する場合と写真を印刷する場合では適している機種が違います。そういうもろもろの事情を知っておくことは、新たな利用方法を考えたり、よりよい使い方を考えるときに役立ちますし、その方が節約できる場合もあります。

というわけで、ある程度は周辺の事情を知りましょう、ということです。パソコンは道具だ、とはよく言われますが、パソコンの置かれている状況は日々変化しています。自転車やナイフのように、一度その使い方を覚えたら半永久的に身体が覚えてくれるような、そういう類の道具ではないのです。パソコンは道具であるという言葉にはいろんな意味があります。気をつけましょう。

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様々なトラブルに対応できる

これ、実は結構大変です。でも何かあるたびに誰かを頼っていては、その人の時間を奪うことになるので、ある程度は自分で勉強しましょうね。まして「パソコン使えます」と言いたいあなた、まさか Word や Excel が使える程度で「使える」なんて言わないでくださいね。(逆にパソコンは使えるかと問われて、どの程度の答えを要求しているのかを想像して、一瞬答えにつまるような人は見込みがあります。)

パソコンの階層構造

トラブルの原因を探るには、ものごとの構造を知る必要があります。車のトラブルに対処する人は車の構造を熟知していますが、パソコンのトラブルもある程度同じことが言えます。

人間が触っているパソコンつーものは、実際には右のような階層構造になっています。

ということは、現実に起きたトラブルについて、この階層の一つ一つを疑って掛かる必要があります。具体的には、

などをチェックすることでトラブルの原因を特定していきます。例えばカーソルキーの入力を受けつけないというトラブルが起きた場合、他のソフトを使っていても同じトラブルが起きるのであれば、OS が原因かな、と予想できますし、他のソフトでは起きないのであれば、そのソフト固有のバグ(ミス)が考えられます。しかし他のマシンではこの現象はまったく起きないのであれば、物理的にそのキーボードがおかしいことも考えられます。その場合は他のマシンとキーボードを繋ぎ変えてみるのもチェック方法の一つです。

また、パソコンというシステムは基本的に以下のような構成になっています。

入出量装置

例えばディスプレイの映りがおかしい、というトラブルの場合、考えられることは上の図と合わせて考えられる原因はいくつもあります。

これらについて、チェックしないとトラブルには対応できません。だから、単に「ディスプレイがおかしい」と、詳しい人に聞いても、その人は答えようがないんです。そうすると結局、その詳しい人はそのマシン全体をチェックする必要が出てきてしまいます。

でも、これを読んだあなたはそんなことはしませんね? 自分でできる範囲でチェックをして、何と何をしたかをきちんと相手に伝えられますね? そう、努力しますね?

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どうすれば必要な情報が手に入るか分かっている

どんなに詳しい人でも自分の頭の中にすべての情報が入っているわけではありません。むしろ、自分の頭の許容量と、入手できる情報量を上手に使い分けている人ほど、「強い人」「使える人」と呼ばれていると思います。

WWW の検索エンジンの活用はもちろん、ソフトメーカー、ハードメーカー、すべての Web がチェックできることが必要です。また、ハードウェアメーカーは、特に部品に関しては海外のメーカーが多いので、ある程度英語を読みこなす必要があります。ま、ほとんどは型番を探し出すことができればいいんですけど。

また、どこでどのようなトラブルが起きているか、という情報が IT 関係のポータルサイトやトラブル情報を専門に扱うサイトなどで発信されています。これらは確認した方がよいでしょう。こうした情報を知っていれば、わざわざ一つ一つしらみつぶしに情報を探す手間を省けますし、日本あるいは世界でいちばん最初に同種のトラブルに当たる確率ってのはかなり低いものです。たいていはどこかで対処の方法を入手できます。あるいは諦めろ、その問題は解決できない、という情報が入手できます。

むしろ、町の電気屋や、少々大きい電気屋程度は少しもアテになりません。秋葉や日本橋の様子は分かりませんが、地方都市の場合は電気屋や工事に来てくれる業者の人などはほぼまったくアテにならないと思ってください。むしろ新進のベンチャーなんかは若手が多く、こうした情報を手に入れるのが得意です。多少不安な感じはしますが、ある程度しっかりしているベンチャー(?)であれば、そちらに頼る方が得策と言えます。

え、こんだけゆっといて、具体的な情報源は全然教えてくれないのか? う〜ん、これも勉強のうちの一つなのですが…。例えば本屋さんやコンビニでよく見る初心者用の雑誌なんかの出版社はどこでしょうか? そういうところに気をつけることが、頼りになる情報源へのアクセスの近道になります。

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人に教える機会が増えることを覚悟する

どんな業界でもそうですが、他人より少しでも詳しい場合は後輩にそれを教える機会がどうしても出てきます。大学の先生もそう、プロのカメラマンもそう。パソコンを使えるようになるってことはそれだけ周りに頼られる機会が増えるってことです。

ましてコンピュータの利用は今が爆発的に伸びている時期なので、ほんとに少しでも使えると、「いいようにこき使われる」ことがよくあります。

もちろんそれを当然のことと私は思いません。ある程度現状ではやむを得ないかもしれませんが…。そこでパソコン初心者のあなたにお願い。今あなたが誰かを頼ろうとしていることは本当にその人に頼らないといけないことですか。よく確かめてください。もうひとつ、詳しくなった未来のあなたにお願い。恩返しのつもりで他の人に教えてあげてください。

この講座も、自分用のメモであると同時に、「俺に聞くな。読め。」というアピールでもあります。

もっとも、これに関しては、そもそも現状のパソコンに強くなることになど意味はないというラディカルな考え方もあります。確かに一般的なユーザーが今のような形のパソコンと向き合い続けるという保証はどこにもありません。ただ、それほど急速に変わるとは私には思えません。パソコンに使われる状態を越え、新しいコンピューティングの形にも柔軟に対応できるためには、むしろ、現状であれこれ悩んでみるのも無駄ではないんじゃないかと、思います。

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パソコンを使えるってことと、、、

さて、最後にもう一度。パソコンの使い方が分かって、いったいそのパソコンを何に活かすのでしょう? もちろん製造、販売、システムインテグレーションなど、それそのもの専門の職業もありますが、たいていの人はそれ以外のことが目的のはずです。

あなたの目的はなんですか? やっぱりそれが大事なんです。

「専門家」と言われる人も、それほどアテにはなりません。無駄金を払わないために、自分の目的を中心に、その周辺へと少しずつ理解を広めて行ってください。