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発表会の撮り方

  • 主役は遠い
  • 発表者の表情が分かるタイミングを狙う
  • 発表者と資料をバランスよく撮る
  • プレゼンの資料を明るさの規準に

研究発表に限らず、何らかの発表会というのも、意外に多いですよね。こうした発表を記録するのも、旅行先の記念写真なんかとは違うノウハウが色々あります。

主役は遠い

まず、会場の広さもありますが、基本的に発表者は遠いです。発表を聞いている分には別に発表者の表情なんか見えなくても、資料が見れて話が聞ければいいのですが、静止画の情報しか伝えることのできない写真ではそういうわけにはいきません。

どうしたらいいでしょう?

望遠で撮る

まず誰でも思いつくのが望遠で撮ることですね。会場の後ろにいても望遠で撮れば発表者を大きく写すことができます。しかし望遠というのは手ブレのところでも触れましたが、けっこう撮るのが難しいのです。今のカメラにはたいていズームレンズがついていますが、望遠を上手に撮るのはそう簡単なことではありません。

まして会場が暗ければフラッシュを使わないと発表者の顔が暗くなり、表情などは分かりません。実はフラッシュは、望遠レンズのようには遠くのものを明るくすることはできないのです。我々が普通に考えているほど、フラッシュの光は遠くまでは届きません。10m先の人物に光を当てようと思ったら、数万円するフラッシュでなければます無理なんです。

寄って撮る

じゃあどうしたらいいか。そうです。カメラが近づくのです。会場の前の方にずんずんと出て行ってそこで写真を撮るのです。

発表の場でカメラマンを任された人はたいてい、自分がカメラマンとして目立つことをきらいます。しかしそれではきちんと記録を取ることはできません。カメラマンに必要なのはつまらない見えを張らずにきちんと写真を撮ることです。目立とうが何しようが構うことはありません。

また、近づいてもしゃがんで撮ってはいけません。しゃがんで撮ってしまうと発表者を下から撮影するため、どうしても普段見慣れない、あまりきれいでない顔になりますし、場合によっては OHP やプロジェクター、演壇などが邪魔になります。撮りたいのはそんなものじゃなくて発表の様子なのですから、そういったものが邪魔しないように工夫しましょう。目立ってもいいんです。堂々と撮りましょう。もちろん、発表者のまん前でいつまでも仁王立ちするのは考えものですけど、焦ってちゃんと写真を撮れないよりは、ちゃんと撮った方がいいと思うくらいの方がちょうどいいと思います。

発表者の表情が分かるタイミングを狙う

さて、これで発表者を大きく写すことができるようになったわけですが、実はまだこれだけでは足りません。発表会の様子を伝える写真としては、発表者が大きく写っていればそれでいいというものではないんです。発表者が手元の資料を見るために下を向いていたり、発表の合間でちょっと気を抜いた瞬間などでは、発表のライブ感を伝えることはできません。

そこで、できるだけ発表者が声を発している瞬間を捉えるようにしましょう。写真に声は写りませんが、声を発しているかどうかは、実は見れば分かります。逆に言えば声を発している瞬間の写真でないと発表会「らしさ」を表現できないのです。「らしさ」を表現できていない写真では、発表会の様子をきちんと伝えることができません。

そのためにはファインダーを覗いて、ピントを合わせて、きちんと構えて忍耐強く待つことと、可能な限りタイムラグの少ないカメラを使うことが大事です。ファインダーから目を離してぼうっと待ってはいけません。ファインダーを通して発表者と対決するくらいの気合いを持ちましょう。こんなものは特別な技術でもなんでもありません。恥や見えをなくせば誰でもできることなんです。

(タイムラグの少ないカメラってのは少し高くつきますけどね。)

発表者と資料をバランスよく撮る

発表者の表情とともに「らしさ」を演出するもう一つの重要な要素は資料です。最近は「プレゼン」という言葉が定着し、資料を提示しながら発表することが多くなっています。聞いている分には分かりやすくていいのですが、こうした発表を写真で記録するには少し工夫が必要になります。

発表の様子をより分かりやすく伝えるためには、やはり提示されている資料を写しこむ方がいいですし、発表者の顔がきちんと見える方がいいです。このとき、資料は発表者よりも大きいのでバランスの取り方が大事になります。

資料だけが大きく写っていて発表者が豆つぶのようになっては本末転倒です。それは発表会の様子の写真ではなく、発表時に使われていた資料の写真です。あくまで主役は発表者なので、カメラと発表者と資料の位置、角度が重要になります。また、OHP やプロジェクターなどが発表者、資料を邪魔しないことも重要です。

カメラポジション

図で説明すると、(1)の場所から狙うとプレゼンの資料が発表者の背後に回ってしまうので、何の発表をしているのかよく分からなくなってしまうかもしれません。もう少し左、図で言うと下の方に移動して、発表者も資料もきれいに画面に収まるように撮った方がいいでしょう。

(2)の場所から狙う場合は、資料提示用のプロジェクターが、ひょっとすると邪魔になるかもしれません。特にこれが液晶プロジェクターじゃなくて OHP だった場合はけっこうヘッドの部分が高いため、発表者が隠れてしまいます。仮に隠れなくても、フラッシュによってできた OHP の影が発表者に覆い被さってしまうかもしれません。この位置はベストポジションであると同時に最悪のポジションでもあるのです。腕の見せどころです。

フラッシュの光や影が写真にどのように現われるか確認するには、シャッターを切る前にファインダーから目を離し、肉眼で確認しながらシャッターを切るようにしましょう。特に一眼レフの場合は写真を撮る瞬間はファインダーがブラックアウトするため、このテクニックは必須です。もちろんデジカメであれば再生すれば分かりますけど。

プレゼンの資料を明るさの規準に

ところがまだそれだけでは足りません。実は資料が明るすぎるのです。普通に人物を中心に写真を撮ると、資料は明るすぎて写らないのです。

フィルムや CCD には適切な明るさと、その明るさから少しくらいずれていても写真として写しとめることのできる許容範囲(ラチチュード)というものがあります。しかし、残念ながら普通に人物にピントや明るさを合わせて撮影すると、資料はその許容範囲から外れてしまうのです。

ではどうしたらいいでしょうか。我々の武器はとりあえずフラッシュだけです。大掛かりなレフ板などは用意することができません。この軽装備でできる工夫をしなければなりません。照明を工夫することもできません。それは会場の準備段階ですべきことです。

(ここから先はピントと露出を別々に制御できるカメラと、できれば大容量のパワーを持ったフラッシュが必要になります。)

フラッシュでできることは、被写体を明るくすることだけです。資料が明るすぎて写らないのであれば、まずは資料が適切な明るさで写るように調整します。

露出とピントを別々に合わせる

具体的には、露出を資料の方に合わせます。露出というのは露光量、つまりフィルムやCCDに当てる光の量を決定するシャッタースピードと絞りの組み合わせのことです。なんだか分からないという人はとにかく「より明るい資料の方に写真の明るさの規準を合わせる」ものだと思ってください。

でもこうすると人物の方はぐっと暗くなってしまいます。暗すぎて表情が分かりません。それでは困るので、ここでフラッシュを使い、人物を明るくします。このとき、人物にフラッシュの光が十分に届く距離にまでカメラマンは近づく必要があります。フラッシュの性能によりますが、5m〜10mくらいの距離には近づかないといけないと思います。

これで、資料をきちんと写しつつ、人物の表情の分かる写真を撮ることができます。

この方法で撮影するには、カメラにAEロックボタンがついているか、あるいはマニュアル(手動)で露出を決定する機能が必要です。シャッターボタンにAFロック、AEロックのすべての機能が集中しているカメラでは上のような工夫を凝らすことはできません。なにしろ明るさは資料を規準にしますが、ピントはあくまで発表者に合わせますから。