パソコンは残念ながら家電品ではありません。自分で手入れ(アップデート*1)をしないといけないんです。
職業プログラマじゃないからこんなことが言えるのでしょうが、プログラムには完成は基本的にありません。「完成ってことにしよう」という合意があるだけです。
まず、プログラムにはバグ(虫)と呼ばれる誤りが存在します。「バグのないプログラムは存在しない」という言葉は、昔はけっこう有名でした。(最近はそんな格言めいた言葉は流行らないようですが。)
プログラムというのは、なんとなく想像がつくと思いますが恐ろしく複雑なものです。そのうちどこが間違っているのかは、実はそう簡単には分からないのです。何度も何度もチェックしても、完璧にはならないのです。でも、完璧を目指してプログラムは日々改良されます。
だから、プログラムは常に最新版をチェックしろ!
最近のプログラムは「ネットワーク」というものに対応していることが多くなっています。このネットワーク、便利ですが、他のプログラムとの通信を行う分、自分の予期しない動作を生むことが多くなってきます。予期していない動作は基本的にはバグ(チェック不足)なのですが、そのうち、ユーザーの持っている情報、環境を破壊する、あるいは情報を盗み出すといった動作に繋がるものをセキュリティホールと呼びます。
例えばどんなに分厚い鋼鉄の金庫でも鍵を刺しっ放しにしていたらダメでしょ?
だから、プログラムは常に最新版をチェックしろ!
プログラムは新しく作る、間違いを修正するほかに機能を増やしたり、その使い勝手を変更したりすることもあります。例えばダブルクリックでしかプログラムを実行したりファイルを開いたりできなかったものがシングルクリックでもできるようになるなどは、そういう機能改善です。(改悪とも言いますが。)同じ性能のプログラムなら使いやすい方がいいでしょ? 同じ機能を持っているならそれがより速く実行される方がいいでしょ?
だから、プログラムは常に最新版をチェックしろ!
何もかもが新しい方がいいのかというと、実はそうでもないのです。例えば OS のバージョンを上げたら今まで使えていたプログラムが動かなくなった、今まで使えていた周辺機器が動かなくなった、というのはよくある話です。
これは、アプリケーションと OS、OS とデバイスドライバ、デバイスドライバとアプリケーションなど、様々なプログラムの間で、整合性がとれなくなったということです。例えば最近のラジカセはもはやカセットテープが入らないものが多くなっています。(すでにラジ”カセ”ではない。)いくら新しくてよさげに見えても、これを買ってしまうと今までに貯めたカセットテープは聞けなくなります。カセットのデッキを接続することができるか、あるいは今までのデッキの方に MD を接続することができるかしないとカセットテープから MD へ移行することはできません。
こうした事態を避けるために、新しい OS、新しいアプリケーションなどをチェックするときには必ず他のものとの対応をチェックする必要があるのです。その結果、例えば OS X の Aqua はかっこいいけど、うちの PowerMac じゃ対応していないから諦めようとか、G4 Cube はかわいいけど、うちのディスプレイには繋がらないから諦めようとか、Windows XP にしたいけど昔のゲームが遊べなくなるのはいやだから見送ろうとか、そういう判断が出てくるわけです。
車は買い換えてもたいてい今まで通りのことが今まで通りにできますが、パソコンの場合はそうはいかないことも多いのです。
BIOS(バイオス)というのは本体(の中心となる基盤=マザーボード)を制御する最も基本的な OS で、マザーボードの中に最初から内蔵されているのでユーザーがインストールする必要はありません。ですが、アップデートはユーザーの手で行うことができます。
具体的には、BIOS は起動時にチラッとメーカー名が出て、そこで何かのキー([ F2 ], [ F10 ], [ Del ] などのキーが多い)を押すと設定画面に入ることができます。(場合によってはパスワードで保護されています。)設定できる項目は例えばどのデバイス(フロッピーとか CD とかネットワークとか)から起動するか、どのデバイスを有効にするか、省電力の設定、などです。Mac の場合は OS と BIOS が基本的にシームレスなので BIOS の設定画面は出てきません。Apple が必要と認めた機能は OS の中に入っていますので BIOS(ファームウェア)の存在を意識することはあまりありません。
Mac はすべて Apple 製(伝統的に BIOS という呼び方をしませんが)ですが、AT互換機の場合はいろいろあります。ただ、完全にハードウェアメーカーが作っているかというとそんなことはなく、有名な BIOS というのもあって、ハードウェアメーカーがその BIOS を採用している場合もあります。例えば Phoenix とか AMI とか Award とか。
また、周辺機器の中にも専用の小さなプログラムが動いていることが多く、これをファームウェアと呼んでいますが、機能的には一緒です。要するにハードウェアに最も近いところにあるプログラムのことです。これが OS、もっと言えばデバイスドライバとやりとりしてハードウェアを制御します。
ここに不具合があった場合、OS やアプリケーション、デバイスドライバがどんなに優れていてもダメです。これを更新する方法は各メーカーから提供されているので、それをよくチェックしてください。中にはアップデートに関する記述がすべて英語の場合もありますが、アップデートしないと新しい OS をインストールできない、などの場合もありますので、英語ごときで逃げるわけにはいかんです、はい。
くり返しますが、BIOS(ファームウェア)のアップデートは最も重要です。
で、このアップデート情報は普通はハードウェアメーカーをチェックします。ハードウェアメーカーと BIOS メーカーが食い違っている場合でもたいていはハードウェアメーカーの方にその情報が載っています。メーカーのダウンロードコーナーは欠かさずチェックです。
特に、たいしたアプリも入れてないし、なんでこれでこんな不安定なん、と思ったら BIOS を疑ってみるのは常套手段です。(BIOS でダメならどっかハードウェア的におかしいんでしょう。)
メーカー情報をチェックです。Windows, MacOS ともにメーカーがパッチ(つぎはぎ)を公開しています。たいていの PC メーカー、量販店、PC系・技術系の雑誌、Web、メルマガなどでこの情報は手に入ります。残念ながら一般誌(紙)ではまず手に入りません。
例えば Windows 95 には OEM で提供されたものだけで OSR 1(という言い方はあまりしないけど。OSR は OEM Service Release の略), OSR 2, OSR 2.1, OSR 2.5 などざっと4種類。(まだあるかも。)Plus ! をインストールしてあるか、IE 4 をインストールしてあるかによっても変わります。Windows 98 は 無印, Win98 SP1, Win98 2nd Edition があり、Windows NT 4 も Service Pack という名のパッチが 6つ出ていますし、Option Pack が 1つ出ています。同じ Windows 95, Windows98, WindowsNT でもこれだけ違います。Windows 2000 も 無印, SP1, SP2 と、現段階(2001.12.)でバージョンが3つあります。
ただ、パッチを当てられるバージョンと当てられないバージョンがあり、致命的なのは Windows 95 で、サポートされ続けた OSR は新しいハードウェアを買わないと手に入らないというめちゃくちゃな状態でした。Windows98 ではその辺は改善されましたが、Windows はアップグレードインストール*2すると不安定になるという話もあり、例えば Win95 から無印Win98、無印Win98 から 2nd Edition へは、やっぱりクリーンインストールした方がいいのです。
言葉の使い方は Microsoft がきちんと定義しているかもしれませんが、ここではまったく新しく、まっさらのハードディスクに OS をインストールすることをクリーンインストール、すでにある OS のバージョンを上げる形でのインストールをアップグレードインストールと呼びます。例えば Windows95 がハードディスクに入っている状態で Windows 95 → Windows 98 にするインストールをアップグレードインストールと呼びます。クリーンインストール用とアップグレードインストール用で、OS のパッケージが変わります。アップグレード用のパッケージは確かに安いですが、これを買ってしまうとクリーンインストールできません。
てことは結局新しい素の OS を買いなおすのが吉ということです。安くない出費です。
しかも、ここに挙げたものはまだまとめて手に入るのでマシなものです。実はそのほかにも細かなパッチが数多く出ています。もうこの辺になるとどのパッチがどう、なんてことを気にするのはほとんど不可能ですので、Windows 98 以降の場合は WindowsUpdate に頼るのがいちばん楽です。ただし、WindowsUpdate はまとめて CD で出してくれたりしないくせに平気で数MB、十数MB のダウンロードをさせるので、フツーのダイアルアップユーザーはフツーの覚悟では WindowsUpdate なんてまともにできません。ものすごい覚悟をしてアップデートしてください。しかしそれでもなお、アップデートをオススメします。(NT, 2000 では Service Pack という形でまとめてダウンロードしてそれを保存しておけるのでいいのですが、9x系の Windows は本当にダメです。)
Windows XP で何がどうなるか分かりませんが、正直なところ初心者の人は高い金出して新品を買わないで、誰かのお下がりでそこそこの機械を使い、それでパソコンの使い勝手に慣れることとパソコンに関する様々な情報源を知ることに精通してほしいですね。(とはいえ、やはり新しくて性能のいい機械がほしくなる、というのも人情ですが。)
MacOS にも細かいバージョンの違いはあります。OS 7 時代はさすがに外すとして、8 系列、8.5 系列、9 系列、X 系列があります。系列内でのアップデート(パッチ当て)に関しては基本的に無料です。最近の 9 や X ではやめましたが、以前は雑誌の付録 CD によく OS のアップデータが収録されていました。また、Apple のサイトからダウンロードしてくることも可能です。
MacOS のアップデートは基本的にユーザーが自分で何らかの方法でアップデータを入手し、自分でアップデート作業を行う(といってもインストーラを起動するだけですが)必要があります。WindowsUpdate のような自動でネットからダウンロードしてくる仕掛けも現在はあるのですが、OS そのものを新しくするような作業は手動が基本です。ただ、一度アップデータを入手すれば次に OS を入れ直したときにはそのデータを使えばいいので、個人的には WindowsUpdate よりはるかに嬉しいです。
MacOS は以前は雑誌の付録 CD にアップデータが入っていたのですが、OS 9, OS X の現在はアップルが配布を許可してくれなくなりました。これはかなり不便。OS X の 10.1 に至ってはダウンロードサービスもなくなりました。どうなってんだ。Mac を売っている店頭ではそれでも少数配布しているのですが、はっきり言って日本の地方では手に入れる方法がありません。無料のアップデートと言っていますが、現実的にはアップグレード CD を Apple に有料で申し込むことになります。開発力、宣伝力に差があるのだから、こういうところで Apple はもっと顧客の心をがっちりつかまないといけないのになぁ。
OS の中で実際にデバイスの制御を担当するプログラムです。これは基本的にはデバイスに付属してくるものですが、一部は OS の中に最初からインストールされています。デバイスドライバを用意したりとか、面倒なことをいちいち考えなくても使えるものは OS の中に最初から用意されているものです。(一部の LAN カードなどにこういうものがあります。)ただ、アップデートは普通、OS とは別に行います。
そこでハードウェアメーカー情報をチェックします。マメに更新するメーカーとそうでないメーカーがあるので、当然マメに更新するメーカーの方がいいです。もし自分の持っている機械のメーカーがマメにドライバを公開してくれるところじゃなかったら、次からはそのメーカーはやめましょう。最近ではドライバをインターネットからダウンロードできるなんてことは珍しくもなんともありません。
例えば何かの製品を買ったとして、接続してドライバをインストールして使ってみるときにメーカーの情報もチェックしてみてください。ほんとに最近出た新製品じゃない場合、意外と新しいドライバがメーカーから提供されています。その場合はもちろん製品についているフロッピーや CD ではなく、インターネット上に公開されている新しいドライバを使う方がいいです。
ソフトウェア、特にネットワーク関係のソフトウェアは最新版のチェックを怠ってはいけません。Windows ユーザーで OutLook Express や Internet Explorer を使っている場合はまったく油断なりません。予想以上に頻繁にパッチが出ています。
これは個人的な考え方ですが、メジャーバージョンが上がる(例えば Word 2000 が Word 2002 になる)ことよりも、パッチが出てくれるかどうかが気になります。上の例に倣えば Word 2000 を 2002 にすることよりも、SR-1, SP2 にすること、できることの方が意味は大きいと思います。これは同じメジャーバージョンの中での完成度が上がっていることを意味するわけですから。
オンラインソフトを使い始めるとだいぶこのバージョンアップの意味が分かってくると思うのですが、売り物だけを使っている場合はなかなかこの感覚は育ってこないかもしれません。
あるプログラムが実行されるときに必要になる下請けプログラムのことです。アプリケーションとデバイスドライバの間に入ったり、よく使うツールを共用してディスクスペースや開発のコストを節約するためのプログラムです。
例えばよく聞くのは VB ランタイムですね。これは Visual Basic で作ったプログラムを動かすときに必要な下請けプログラムのことで、同じ VB5, VB6 用の下請けプログラムでもバージョンがいくつもあります。また Direct X なんてのもそうです。よくゲーム関係で耳にするのですが、要するにマルチメディア関係の下請けプログラムです。
Mac で言えば○○Lib とか。
ま、こうした下請けのプログラムは意外とたくさんあるのです。
これも OS のアップデートを行うとある程度更新されるのですが、OS とは別にランタイムだけのアップデートを行うことができるようになっています。
整合性チェックにも当てはまるのですが、こうした最新版に関する情報はメーカーからだけの情報では本当に良くなったのかどうかが分かりません。雑誌や掲示板、ML などの実際に使ってみた情報が役に立ちます。ただ、こうした情報は単なる噂の域を出ないものから、メーカーも知らなかった事実を指摘しているものまで千差万別で、その見極めはそれほど簡単ではありません。
一つのヒントはユーザーのレベルです。ハイレベルなユーザーが好むものとそうでないものがあり、ハイレベルなユーザーが好むものに関しては自然と集まる情報のレベルも高くなります。もちろんその機械やソフトが自分の好みと合わなければしょうがないですが、そういう「信頼できる情報の集まりやすさ」を規準にハード、ソフトを選ぶというのも快適な PC ライフのためには賢い選択です。
「アップデート」は「最新にする」という意味で、「アップグレード」は「性能を高める」という意味です。どちらもソフトウェアの世界では使っている「プログラムを新しくする」という意味なのですが、変化の大きい方がアップグレードです。例えば Windows 98 を Windows 2000 にするのはアップグレード、Windows 2000 が Windows 2000 SP2 になるのはアップデートです。
「パッチを当てる」は「アップデートの範疇」に入ります。
使っている PC のハードディスクを大容量のものに交換したり、CPU を速いものに交換することもアップグレードと呼んだりしますが、ハードウェアの場合はどこまでがアップデートでどっからがアップグレードという区別は基本的にしません。十把一絡げでアップグレードでしょう。
言葉の使い方は Microsoft がきちんと定義しているかもしれませんが、ここではまったく新しく、まっさらのハードディスクに OS をインストールすることをクリーンインストール、すでにある OS のバージョンを上げる形でのインストールをアップグレードインストールと呼びます。例えば Windows95 がハードディスクに入っている状態で Windows 95 → Windows 98 にするインストールをアップグレードインストールと呼びます。クリーンインストール用とアップグレードインストール用で、OS のパッケージが変わります。アップグレード用のパッケージは確かに安いですが、これを買ってしまうとクリーンインストールできません。