説教講座ではホームページ作りについて、お約束系の話が多いです。しかしその辺は「間違った作り方を覚えてほしくない」という思いから話が広がらないようにブレーキを掛けるためであったり、純粋にテクニカルな話で、逆に言うと、「別にフツーにパソコンで見れればそれでいい」という場合は、実はそれほど難しくありません。というか全然難しくありません。
だって一太郎でも Word でも最近のバージョンならフツーに HTML 形式で保存できますもの。ワープロが使えりゃ作れるのです。
なんか、簡単そうでしょ?
でも、その手のソフトが書き出す HTML が極悪というか劣悪というか、まぁひどいものであることもまた有名な事実でありますし、正直「思った通ようにならない」ことが多いと思います。今回はその辺の話を中心に扱い、「こういうことは基本的には無理なんだ」ということが分かることで、「欲張らないホームページ作り」 「ワープロ文書をついでに Web 形式に」という発想がスムーズにできるように、というところを目指します。
実は Web では同じ文字をユーザーに見せることすら困難です。
まず一つにフォントの問題。フォントは今のところ基本的にプラットフォーム依存です。Windows のフォントと Mac のフォントは同じじゃないし、Windows 同士でも Office が入っているか否か、葉書作成ソフトが入っているか否か、その他諸々のフォント関係のソフトが入っているか否かで表示できるフォントは大きく変わります。
印刷物の場合はそんなことは関係ありません。手元の機械で印刷して、できあがったものを相手に渡せば済む話ですから。
そして次にそのフォントのコントロールの問題。手っ取り早く言えば、例え相手のマシンに自分のマシンと同じフォントが入っていたとしても、WWW ブラウザがその指定を忠実に反映してくれるわけではないってことです。もちろんブラウザによって対応はマチマチですし。
そしていわゆる「機種依存文字」というものもあります。
最もよくある失敗は@などの丸付き数字でしょう。これ、読める人と読めない人がいます。あと、ローマ数字。Zとか。数字はアラビア数字か漢数字にしましょう。あとは ( ) や ] なんかで演出しましょう。
印刷物と違い、文字サイズはそれほど細かく指定できません。だいたい、ワープロの画面で作っているときとできあがりの印刷物でもイメージが違うでしょ? 同じことです。画面上の文字サイズのコントロールは普通のソフトではそれほど厳密にはできません。本格的な DTP 環境でもない限りは。
印刷物の場合は紙のサイズに基準があります。これはきっちり規格で決まっているので安心して使える基準です。
しかし、パソコンの画面は何cm×何cmと決まっているわけではありませんし、何ドット×何ドットと決まっているわけでもありません。おまけに WWW ブラウザのウィンドウサイズも勝手気ままに変更できます。
見え方は見る人によってマチマチなのです。
そしてサイズが決まっていないので、サイズを基準にしたページという単位も成り立ちません。
よくホームページ、Web ページという表現を取りますが、このページには基準が何もないのです。印刷物なら 12 ポイントの文字で A4 で何ページ、という具合に分量の計算が成り立ちますが、Web の場合は文字サイズは変わるわウィンドウサイズは変わるわおまけにスクロールするのです。(しない環境もありますが)
スクロールさせたすべてを長ーい1ページと捉えることもできますが、明らかに印刷物とはページの考え方が異なります。
印刷の場合、余白にイラストを入れて雰囲気を演出したりしますが、Web の場合はこの画像の扱いがまた問題です。
最も基本的な Web のレイアウト方法は右寄せ、左寄せ、中央揃えだけです。画像もそうです。微妙なレイアウトはできません。スタイルシートを使えばできなくはないですが、スタイルシートを使った方法は見る人がスタイルシートに対応しているブラウザを使っていなかったりスタイルシートの機能をオフにしていたら意味がなくなります。演出のための画像が逆に邪魔に感じられたりしてしまいます。
逆に必要な画像ならその画像を中心に文章を組み立てたりするわけですから、実はそれほど自由に動かせる必要もありません。
けっこう、Web の世界はストイックなくらいでちょうどいいのです。
「Webグラフィックス超入門」を参照してください。
どうしても印刷イメージで Web に公開したいという場合は方法があります。PDF という形式に変換してしまう方法です。
これには Adobe Acrobat というソフトが別途必要なのですが、これをインストールするとプリンタとして Acrobat Distiller が入りますので、作った文書を印刷するときにプリンタを Distiller にしてください。するとファイルの保存先を聞かれるので適当に保存する、と。ま、詳しいサイトや書籍がたくさんあると思うのでそれを参考にしてください。
これで作った PDF ファイルというものはほとんど印刷イメージそのものなので、従来の印刷物を作る要領で作成した文書をそのまま Web に公開できます。
ただし、なんでもかんでも PDF でいいかというと、それは難しいところです。PDF の文書を WWW ブラウザで見るためには見る側も Adobe Acrobat というソフトか、あるいはフリーソフトの Acrobat Reader というソフトをインストールする必要があります。最近のパソコンには最初からインストールされているので問題はほとんどありませんが、中にはこのソフトをインストールしていない環境の人もいるかもしれません。
また、PDF 形式を見るためには普通の Web ページを見るよりもマシンパワーを必要とします。要するに「重い」のです。そのまま紙に印刷してもきれいな文書になりますが、果たしてすべての文書が印刷を前提にしたものなのか、というところが問題です。
OA という言葉がもてはやされたときに、紙は使わなくなるという話が出ましたが、オフィスの紙の消費量はいっこうに減りません。これは、「OA 化しても作る文書が印刷を前提にしているものなのだから当たり前」なのです。減るわけがない。
「情報」を公開するというのはその辺が従来の感覚と変わってくることでもあります。印刷物はそれそのものが「情報」なのではありません。「中身が情報」なのであり、紙のサイズを含めた見た目は「表現」です。もちろん分かりやすさのために「表現」があるわけで、「表現」を無視してよいというわけではありませんが、情報と表現は明確に違うのです。
で、果たしてのその文書の場合は両方を追求する必要があんのか、ちゅーことなのです。
なんだかしち面倒くさいと思うかもしれません。
でも逆に言えば、
だけでいいのです。それだけで、世界に向けて発信するための準備はできてしまうのです。
凝ったことをするためには込み入った知識が必要ですが、シンプルな場合はぜーんぜん難しくないのです。