業界標準の PowerPoint というソフトがあります。かつて Lotus1-2-3 や Multiplan(古いって!)がそうであったように、プレゼンソフト = PowerPoint という感がありますが、果たしてそうなのか? だいたいプレゼンてなによ!?
ちょっと追記。(2001.12.)
プレゼンテーションというのは、別にパソコンを使わなきゃいけないものではありません。PowerPoint と同時に日本語として定着し始めたおかげでごっちゃになってしまいますが、要するにこれまでの日本語では「発表」と呼ばれていたものです。いや、今でも通じますけど。
ただ、「発表」という表現がどことなく、古い学校的なものを連想させてかっこ悪いんですね。そういう意味では「プレゼンテーション」という別な言葉が出てきたのは悪いことじゃないと思います。ま、それはさておき、とにかくプレゼンというのは発表なわけで、プレゼンソフトはその発表をサポートするソフトなわけです。
プレゼンというのは様々な形がありまして、ただ原稿を読み上げるものから演劇調のものまですべてプレゼンです。その中でプレゼンソフトがターゲットにしているのは、OHP などで資料を提示しながら喋るタイプのプレゼンです。
上のことを基本にしながら、プレゼンソフトにほしい機能をちょっと挙げてみます。逆にプレゼンソフトがなんだかよくわかんねーや、という人はこれを読めばまーだいたいプレゼンソフトについている機能が分かりますし、いわゆる「使いこなし」のポイントはどこかが分かると思います。
プレゼンは資料を提示しながら分かりやすく説明するためのものなわけですから、まずは OHP やスライドが表示できる必要があります。
普通、いまどきのパソコンの画面にはいろんな情報がてんこ盛りに表示されています。それこそプレゼンに関係のない情報だらけです。そうした雑多な情報を排してプレゼンに必要な情報だけにする、要するに画面全部を資料で埋め尽くすことが最初に必要な機能です。これが全画面表示です。Windows の場合は Window の最大化がこれに近いですね。あれはまだタイトルバーやメニューが表示されているので完全な全画面表示じゃないですけど。
表示の仕方の違いは以下の通り。
これが普通のウィンドウ表示 | |
最大化 | |
全画面表示。余計な情報はない。 |
で、全画面表示ができるだけじゃなくて、複数枚の資料を次々に提示できる必要があります。これをスライドショーと言います。この機能はプレゼンソフトに限らず、画像ソフトなんかにもけっこう搭載されています。写真のスライドを次々と投影するのに引っ掛けているんですね。
ま、要するにドローってことですね。(レイアウトソフトと言い直した方がいいのかな?)資料を提示するだけでなく、自分で作ることができなきゃね。
スライドに資料を書くときは、自分の言いたいことを分かりやすく見せることが大事です。分かりやすい資料は一般に
のが基本になりますから、それらの部品を見やすくデザインするための機能が必要になります。そのためにはワープロのように行に頼るのは得策ではありません。それよりも、文字や図形を自由に配置できる機能が必要になります。まさにドローソフトの得意とするところです。
OHP やスライドのメタファーでプレゼンソフトができているとは言え、せっかくパソコンを使っているんだから、マルチメディアな作りにしたいところです。
そこでやっと登場するのが文字や図が動くアニメーションや、その動きに合わせて聞こえる効果音です。といってもね、こういうのって、「たまに」使うから「効果」があるんですよ。PowerPoint でほんとに大事な機能なのかというと、そんなことはないでしょう。
その世界ではデザインのノウハウってのはけっこうたまっているものでして、表現したいものによってその雰囲気を決定するデザインの定型があります。効果的なプレゼンのためのプレゼンソフトなわけですから、このノウハウはぜひ提供してほしいところです。で、それを提供するのが目的別のテンプレートなわけです。
残念ながら今あるソフトは、そこまでプロのノウハウが反映されたものってのは少ないですね。単に作業を単純化するのが目的のようで。
プレゼン作り講座なんてものを受けたことがないので正しいプレゼン作りの手順てのは知らないんですが、自分の経験から言うと、最初に構成があって、その構成にそって1枚1枚のスライドを作っていくというよりも、できたスライドを見ながら順番を入れ替えたりして悩む時間が意外に長いものです。
そこで入れ替えが手軽にできるようになっていてほしいのです。例えばワープロでいう「ページ」の感覚だと、図や文の入れ替えで様々なレイアウトが狂ったりして結構大変です。これは「ワープロで扱う文章は連続したデータだから」なのですが、スライドとスライドの関係というのは、見せる人、あるいは見る人の頭の中では連続するけれども、データとしては連続していないんです。ストーリーものじゃなくて読みきりものだ、と書いたら分かりやすいかな。あるページとあるページを入れ替えても、その前後のページに影響が出ないのが理想的です。
ま、とにかくスライドの入れ替えは楽にできないと困るぞ、ってことです。(その辺が実はクラリスワークスでプレゼンを作るのは大変なところなんですよねぇ。)
アウトラインプロセッサというのは長文を書くときにその構成を考えることを支援するツールなのですが、この機能もプレゼンソフトにはほしいところです。アウトライン機能は、いまどきのワープロソフトには当たり前でついているんですが、むしろプレゼンソフトにこそ必要なんじゃないかな?
プレゼンというのはさっきも書いたようにその構成について、文章よりもかなり練るものなんです。文章というのは、その文章を発表する業界においていろいろフォーマットがありまして、悩むと言っても意外にフォーマットの中で悩んでいるものです。プレゼンにも一応セオリーの流れはありますけど、その資料の見せ方の多くは、個性を生かすことのできるものですし、見せ方によってずいぶんと相手に与える印象が変わってしまいます。さらに文章のように何度も読み直したりするものでないだけに、その変わってしまう印象の持つ意味が重要なのです。つまりそれだけ「構成」がプレゼンにとって、プレゼンソフトにとって重大だということです。
ほぅら、アウトライン機能、ほしいでしょ。この辺は、確かに PowerPoint 2000 はよくできてます。
こんな感じに。
ことがプレゼンソフトにとって大事だと言えるでしょう。
こうした機能が一つのパッケージにまとまっているに越したことはありません。使う方としてはそれがいちばん楽です。でも、いくつかのソフトを組み合わせて同じ機能が実現できるのであれば、何も一つのソフトにこだわる必要はありません。何を使ったって、相手にその情報が伝わればいいんですし、逆に立派なソフトを使っても内容が伝わらなければ意味がないのです。
でも、インターネットなコラボレーション時代(うわぁ)の今、できあがるファイルフォーマットも考える必要があります。何度も言うてますけど、自分以外の環境も視野に入れんといかんのです。
例えばできあがったプレゼンをネットで配信する場合、考えられる方法は
なんかですかね。
HTML + 画像であれば現在普及しているたいていのブラウザで見ることができますし、今のソフトはだいたいこうした形式での保存に対応しているのでお手軽です。ただし、ブラウザで見るときにちょうどいいサイズの画像にしてしまうと、詳細な情報はかなり抜け落ちてしまいますし、スライドの枚数が増えた場合はかなり大量の画像ができるため、容量も大きくなり、転送時間も長くなります。
PDF はこの講座のあちこちで推しているのでもう耳タコだと思いますが、なかなかよいです。PDF にはムービーの貼り付けなどもできるので、ハデハデなアニメーションが要らなければ、プレゼンそのものもこれでこなせます。(Adobe の方はやはりこれでプレゼンしてました。)
Flash をプレゼンに使うというのはあまり聞かないと思いますが、ハデなアニメーションをさらにハデに、また部分的にインタラクティブな仕掛けを作りたい場合はこの方法は有効です。ただし、Flash を使いこなさないといけないので、Web デザイン方面に明るい人でないとこの技はつらいかも。でもこれもできあがったプレゼンファイルをそのままネット配信できるのでなかなかよさげです。
SVG は画像形式なのでプレゼンに使うにはちょいと向いてないような感じですが、Web ブラウザとうまく組み合わせれば十分使えると思います。JavaScript などでアニメーション効果を作れるので、あながち無理とも言えません。(まだちょっと時期尚早かもしれませんが、技術に明るい人たちの前では下手なアニメーションよりもインパクトあるでしょう。)これも今は Web 方面に明るい人向け、かな。あと、SVG に関するオーサリングツールってのがまだ(2001.12.現在)ないので、現実的には Flash よりもさらに道は険しいでしょう(^^;
でも今からこういう形式を視野に入れておくことはいいことですよ。あとで必要になったときに慌てなくて済むし。
残念ながら、プレゼンソフトはプレゼンそのものの違いを吸収するほどの威力は持ちません。プレゼンというのはあくまでスライドではなく、喋る人を含めた「全体」なんです。
分かりやすく言えばスピーチなんかがそうですね。最近(2001年1月現在)大統領選がありましたけど、やっぱ大統領になろうかという人はスピーチがうまいですよね。なによりかっこいい(笑) そのかっこよさを演出するのは、内容はもちろん、話の間(ま)や服装、立ち位置など、すべての要素がからんできます。
プレゼンソフトを使うとして、よいプレゼンのためには、資料の作り込みもありますけど、そのほかに話し方もあります。話し方には適切なスピード、適切なアクセント、適切な発声がありますね。話し方のほかにも立ち居振舞い。雰囲気って言ったらいいですかね。いくらきれいで聞き取りやすい日本語でもおどおどしゃべっているのと堂々と喋っているのとでは違います。また、一方的に話し続けるのではなく、会場とのやりとりの間を考えるのも重要ですね。プレゼンていうのは「ライブ」ですから、準備段階での完成度の高さも大事ですが、いざというときには臨機応変にその構成などを変えられるとよりよいでしょう。
一つ悪い例を示します。「パワーポイントを使うので座って発表させていただきます。」というやつですね。あれ、意味不明です。PowerPoint のために座らなきゃいけないのであれば、その人は PowerPoint を使うべきじゃないでしょう。立って発表するのが当然の場で、プレゼンソフトという、本来プレゼンをよくするための一つの道具に振り回されて座ってしまうというのは、プレゼンをよくするためのソフトの使いこなしからはほど遠いと言わざるを得ません。完全に勘違いしています。
ま、要するにプレゼンソフトの使いこなしなんて、プレゼン全体を構成する何分の一かでしかないのです。PowerPoint が使えなければプレゼンができないわけじゃないし、PowerPoint が使えればプレゼンができるわけでもないのです。